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『吸血鬼の血』 『ドラキュラ』と同じ1897年に生まれた、もうひとつの吸血鬼小説 新訳・解説・注釈付き
1897年、ブラム・ストーカーの『ドラキュラ』と同じ年に、もう一つの異色の吸血鬼小説が世に出た。フローレンス・マリヤットの『吸血鬼の血』である。
本作の主人公ハリエット・ブラントは、墓から蘇り血を吸う怪物ではない。若く、美しく、魅力に満ちた彼女の周囲では、なぜか人々が衰弱し、ときには死に至る。本人に悪意はあるのか。それとも彼女自身も、自らの出生と遺伝に翻弄される犠牲者なのか。マリヤットは、吸血鬼という存在を明確な怪物として描くのではなく、欲望、身体、遺伝、恐怖、そして見えない生命力の消耗という曖昧な領域へと置き直した。
物語の背景には、ヴィクトリア朝末期の医学と疑似科学、退化論、心霊主義、植民地主義、人種観、そして女性の欲望に対する社会的不安が複雑に交差している。ジャマイカに生まれ、修道院で育ったハリエットは、英国社会から見れば「異質な存在」であり、その身体そのものが当時の恐怖や偏見を映し出す場となっていく。
『カーミラ』から『ドラキュラ』へと続く十九世紀吸血鬼文学の系譜のなかで、『吸血鬼の血』はきわめて独自の位置を占めている。血を吸うという行為をほとんど描かず、それでもなお「吸血鬼」と呼ばれる存在を生み出したからである。その姿は、後世の「サイキック・ヴァンパイア」という概念を先取りするかのようでもある。
本版は、1897年刊行のテキストに基づく新しい日本語訳に加え、作品をより深く読むための解説と注釈を収録。フローレンス・マリヤットの生涯と心霊主義、『ドラキュラ』との比較、女性吸血鬼の系譜、遺伝と退化をめぐる十九世紀の思想、帝国・人種・植民地主義の問題など、多角的な視点からこの忘れられたゴシック小説を読み解く。
怪物なのか、犠牲者なのか。
愛は呪いから人を救うことができるのか。
『吸血鬼の血』は、吸血鬼文学の歴史に隠れていた、もう一つの1897年を現代の読者に甦らせる。
フローレンス・マリヤット(1833–1899)は、ヴィクトリア朝イギリスの小説家・女優・歌手。作家フレデリック・マリヤットの娘として生まれ、数多くの小説を発表した。心霊主義にも深い関心を持ち、『There Is No Death』などの著作を残している。1897年刊行の『吸血鬼の血』は、女性吸血鬼、遺伝、植民地主義、心霊主義を交差させた異色のゴシック小説として近年再評価されている。
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- Artikel-Nr.: SW9783565509225110164
- Artikelnummer SW9783565509225110164
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Autor
Florence Marryat
- Verlag neobooks
- Seitenzahl 314
- Barrierefreiheit
- ISBN 9783565509225